溶射皮膜

溶射皮膜の金属組織学的試料作製

溶射皮膜は多くの用途にわたって幅広く使用されていますが、金属組織学的調査のための試料作製が困難な可能性があります。 溶射皮膜の試料作製時の主な課題は何ですか?そして、それらをどのように克服しますか?

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溶射皮膜の主要特性

溶射皮膜は、通常持っていない特定の表面品質を付与するために基材に適用されます。 したがって、基材は部品のバルク強度に関与し、皮膜は腐食、摩耗、熱の各耐性などの優れた表面品質を付与します。

溶射は1900年代初頭に発明され、亜鉛を使用して基材を「金属化」して腐食を防止しました。 現在、セラミック、炭化物、複合材、金属など多数の異なる溶射材料が使用されています。そして、溶射皮膜は航空宇宙、発電産業の新しく改造された部分や部品に対して幅広く使用されています。

溶射皮膜の金属組織学

溶射皮膜の金属組織学には、いくつかの目的があります: それは、品質管理、不具合分析、新製品の開発のために溶射条件を定義し、監視し、管理することです。 手順には通常、溶射される部分に対する工程を定義、最適化するためにテストクーポンを皮膜することが含まれます。 その後、以下の評価をするために、このテストクーポンの切断面の試料が金属組織学的に作製され、調査されます:
  • 皮膜の厚さ
  • 多孔性のサイズと分布
  • 酸化物および亀裂
  • 基材との密着性
  • 境界面の汚染
  • 未溶融粒子の存在
多くの異なる溶射材料があり、ときには特殊な組み合わせもあります。 したがって、分析用に作製試料の皮膜と基材を知ることが重要です。これにより、材料の機械的摩耗の条件下における挙動を推定できるようになります。 溶射工程が異なると皮膜密度と構造も異なることから、多孔性と酸化物含有量を推定するために、特定の試料に使用される溶射方法を知ることも役立ちます。

溶射皮膜の試料作製における課題

金属組織学的に試料作製された溶射皮膜における真の多孔性を評価する方法は、依然として議論の対象になっています。金属組織学的研磨と琢磨が適切に実施されなかった場合、皮膜構造の一部でない人工的な疵をもたらす可能性があるためです。

例えば、金属または金属/セラミック皮膜内において、研磨時により軟質な金属が孔内に擦られて入り込み、それが適切に琢磨されない場合、真の多孔性を隠してしまいます。 セラミック皮膜は比較的脆性で、研磨時、粒子が表面から脱落します。 徹底的に琢磨されない場合、これらの粒子は高い多孔性の不適切な圧痕を残します。

金属組織学分析のための溶射皮膜の試料作製に関する一般的な問題は、以下のようなものです:

切断: 切断面作製のために溶射皮膜の試料をクランピングすることは、脆性皮膜に亀裂を発生させる、または非常に軟質な皮膜を圧縮させる可能性があります。

埋込: 高い収縮率の冷間埋込樹脂は、基材との密着性が弱い皮膜に対して損傷を引き起こす可能性があります。収縮の隙間を原因として、皮膜が樹脂によって支持されないことで、研磨と琢磨時に皮膜の層間剥離につながる可能性があります。

研磨琢磨: エッジ部のダレは、平坦でない琢磨とその後の皮膜密度に関する誤った解釈につながる可能性があります。 また、皮膜と基材間の浮彫は、誤った解釈につながる可能性のある影を生成します。

溶射皮膜
図1: 十分研磨されなかったセラミック溶射皮膜

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図2: 適切に研磨された図1と同じ皮膜

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図3: エッジ部のダレは、平坦でない琢磨とその後の皮膜密度に関する誤った解釈につながる可能性があります。この場合、不適切な研磨は皮膜中央の低い多孔性を示唆しています

溶射皮膜
図4: 樹脂/皮膜の境界面で暗線を示す浮彫のあるWC/Co溶射皮膜。皮膜と基材間の浮彫は、誤った解釈につながる可能性のある影を生成します。

 

溶射皮膜の試料作製: 切断&埋込

溶射皮膜の切断

切断ホイールを選択する場合、主に基材の材料を考慮します(通常は金属)。 しかしながら、皮膜から脆性粒子が引きずるのを回避するためには、特にセラミック皮膜がある部品を切断する場合には、緩い結合(軟質)のホイールを選択してください。 皮膜がセラミックの場合でも、それは全体的な断面領域の小さな比率だけを構成しているため、ダイヤモンド切断ホイールで切断する必要はありません。 通常、軟質な酸化アルミニウムホイールによって切断可能です。 セラミック皮膜が非常に厚い場合、高密度の樹脂結合ダイヤモンド切断ホイールを代替として使用できます。

切断によって引き起こされた亀裂が最終仕上げ研磨後に現れる場合があります。 その場合、試料を再研磨、琢磨してください。 通常、亀裂が切断によって生じている場合、見えなくなります。 亀裂が切断起因でない場合、再び見えるようになるか、その他の領域で見える場合があります。

ヒント: 脆性および非常に軟質な皮膜の保護方法
クランプと試料の間に発砲スチロールまたはゴムの薄片を挟むと、脆性および非常に軟質な皮膜の保護に役立ちます。

ヒント: 層間剥離の回避方法
テストクーポン以外の部品を切断する場合、基材から皮膜に向けてではなく、皮膜に切り込みを入れてください。この方法は、切断ホイールの抗力によって基材から密着皮膜の剥離を引き起こすのを回避するのに役立ちます。

ヒント: 脆性質の皮膜の保護方法
切断面作製中に脆性質または薄い皮膜を保護するために、切断前に冷間埋込エポキシ樹脂による真空含浸を行います。 その後、切断されたピースは研磨と琢磨前に再埋込することが可能です。

溶射皮膜
図5: 切断によって生じたプラズマ溶射皮膜と基材間の亀裂 

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図6: 切断面作製によって生じた亀裂

溶射皮膜の埋込

熱間埋込は溶射皮膜を容易に損傷させるため、推奨されません。 代わりに、弊社はエポキシ樹脂(プロントフィックス, エポフィックス, カルドフィックス-2)を使用した冷間埋込を推奨しています。 しかしながら、高い収縮率の冷間埋込樹脂は、基材との密着性が弱い皮膜に対して損傷を引き起こす可能性があります。

一般的に全ての皮膜に対して真空含浸が推奨されています。 含浸の深さは、多孔性と孔間の連結の度合いに依存します。 非常に多孔質な皮膜は、より高密度の皮膜よりも容易に含浸できます。一方、10 %未満の多孔性の皮膜は正常に含浸できません。

ヒント: ボイドの識別方法
透明または半透明の埋込樹脂によって充填されたボイドと皮膜の構造要素を識別することは困難な場合があります。 その解決法は、冷間埋込樹脂に蛍光染料(エポダイ)を混合することです。 この混合は、ロングパスブルーフィルターとショートパスオレンジフィルターを使用した場合にボイドを黄色に着色します。 (セラミック皮膜は半透明で皮膜全体が蛍光に表示されるため、この技法は適用できません。)

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図7: 熱間圧縮埋込によるセラミック溶射皮膜に対する損傷

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図8: 冷間埋込された図9と同じ皮膜

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図9: 明視野におけるWC/Coプラズマ溶射皮膜

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図10: 蛍光照明下における図11と同じ皮膜



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溶射皮膜の試料作製: 研磨&琢磨

面出し研磨

原則として、面出し研磨は可能な限り最も細かいSiC研磨フォイル/紙で開始する必要があります。 このことは、脆性粒子の破砕による人工的な多孔性の生成を防止します。

しかしながら、以下のような例外があります:
  • 非常に高密度または厚いセラミック皮膜は、ダイヤモンドによってより効果的に面出し研磨されます(例、MD-ピアノ 220MD-メッツォ 220MD-モルト 220)
  • 全体として検査する必要がある多くの試料または大型部品においては、より迅速に実施できる砥石による面出しを行う場合があります。
どのような方法を使用する場合でも、最初の試料作製工程は、面出し研磨による新たな損傷をもたらすことなく、切断によって生じた亀裂を取り除くことです。 最適な試料作製方法を試験する場合、炭化ケイ素とダイヤモンドの研磨の両方を試し、その特定のケースでどちらが最も適しているかを確認してください。

精研磨

精研磨は複合材料研磨円板上でダイヤモンドを使用して行うのが望ましいです。 この研磨は、平坦度を維持されると同時に良好な材料研削率を提供します。
  • セラミック皮膜の場合: 精研磨円板MD-アレグロを使用してください
  • 金属皮膜の場合: 精研磨円板MD-ラルゴを使用してください

琢磨

スミアリングされた金属を除去するには、絹布(MD-DurまたはMD-Dac)で徹底的に試料を琢磨してください。

最終仕上げ研磨

金属皮膜は、柔らかい布上で1 μmのダイヤモンドまたはコロイダルシリカ(OP-Uノンドライ懸濁液)のいずれかを使用して琢磨できます。 フュームドシリカ懸濁液OP-Sノンドライ懸濁液は過度の浮彫を生成するため、金属溶射皮膜の琢磨には推奨されていません。 しかしながら、OP-Sノンドライ懸濁液は、構造に良好なコントラストを付与するため、セラミック皮膜の最終仕上げ研磨に適しています。

最適な試料作製方法を試験する場合、炭化ケイ素とダイヤモンドの両方を試してください。 場合によっては、1 µmのダイヤモンドがコロイダルシリカよりも望ましい場合があります。

溶射皮膜

溶射皮膜

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例1: 金属溶射皮膜

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図11: 例1: 金属溶射皮膜。 精研磨後 

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図12: 例1: 金属溶射皮膜。 3 µmで琢磨

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図13: 例1: 金属溶射皮膜。 最終仕上げ研磨後

例2: セラミック溶射皮膜

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図14: 例2: セラミック溶射皮膜。 精研磨後

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図15: 例2: セラミック溶射皮膜。 3 µmで琢磨

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図16: 例2: セラミック溶射皮膜。 最終仕上げ研磨後

溶射皮膜のエッチング

多くの場合、主要な構造は最終仕上げ研磨後に確認できるため、溶射皮膜ではエッチングはあまり使用されません。 しかしながら、金属構造をさらに調査しなければならない場合、エッチングが必要になる場合があります。

原則として、特定の材料に推奨されているエッチング液は、同じ材料の溶射皮膜にも使用できます。 通常、基材が皮膜材料と類似している場合、エッチングの腐食はより均一になります。

制御雰囲気中で溶射された皮膜には、酸化物が少ないか全く無いため、皮膜構造を識別することが困難になります。 そのため、これらの皮膜は化学エッチングによって対比させる必要があります。

ニッケルおよびコバルトベースの超合金の真空溶射皮膜は、その基材に使用されているのと同じ溶液でエッチングするか、10 %のシュウ酸水溶液で電解エッチングすることができます。

モリブデンを含む皮膜は、以下のエッチング液を使用することで明らかにできます:
  • 水 50 ml
  • 過酸化水素(3 %) 50 ml
  • アンモニア 50 ml
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概要

通常、溶射皮膜は、基材の耐腐食性、耐熱性、耐摩耗性を向上させることを目的として、基材に特定の表面品質または機能を付与するために多くの産業で幅広く使用されています。 多くの場合、金属組織学は基材に対する密着性だけでなく、多孔性、酸化物、未溶融粒子を評価するために使用されます。

金属組織学的試料作製のための溶射皮膜の試料作製に関する重要な推奨事項
  • 不適切な研磨と琢磨手順は分析に影響を与える可能性があるため、結果を再現できるように材料を体系的に準備してください。
  • 皮膜内の亀裂を回避するには、高精度な切断において正しい切断ホイールを使用することが重要です。 その後、エポキシ樹脂で埋込を行う必要があります。
  • その理由は、皮膜が粗研磨によって容易に損傷を受けるためです。 そのため、研磨は可能な限り最も細かい砥粒によって行う必要があります。
  • 精研磨は、(浮彫を回避するために)剛体円板上でダイヤモンドを使用して行い、その後、絹布上で徹底的なダイヤモンド琢磨を行う必要があります。

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